人権作文の書き方~小学生,中学生,高校生別に解説~構成とテーマで差をつけるコツとテーマ一覧もご紹介

夏休みの宿題として、人権に関する作文が課題として出されることはありますが、そのテーマに取り組む際に戸惑うことがあるかもしれません。一般的に、人権に関する作文が得意だという人は少ないかと思いますが、特定のアプローチやヒントを活用すれば、質の高いエッセイを効果的に執筆することが可能です。

この記事では、小学生、中学生、高校生向けに、人権についての作文を書く際に考慮すべき要点や、他の人と差をつける方法について分かりやすく紹介します。

人権作文を成功させるための5つの要点

人権に関する作文を書く時の成功の鍵は、書き方のポイントをしっかりと理解し、それに基づいて取り組むことです。人権作文を書くにあたり、以下の5つの要点に焦点を当てることが大切となります。

1. テーマ選び
どのテーマに焦点を当て、人権作文を書くのかを決定する。

2. 構成と流れ
選んだテーマに沿って、文章をどのような構成と流れで書くかを考える。

3. 体験談の取り入れ
どの部分にどんな体験談を組み込むかを考える。

4. 事実と考えを入れ込む
テーマに関する事実と自身の考えや感情を結びつけ、文章に組み込む。

5. まとめ
文章の最後に、テーマに対する今後の課題や自身の意識の変化について書く。

これらの5つの要点を、事前に概要をメモにまとめ、それをもとに文章を書いていくことをおすすめします。

では次に、1から5までの要点を具体的に説明していきますので、参考にしてください。




人権作文の書き方1:テーマ選び

人権についての作文を書く際に、テーマの選定が難しいと感じる人は少なくないでしょう。人権に関連するテーマとしては、以下のようなものがあります。

・いじめ
・戦争
・障害者
・差別(性差別、人種差別など)
・高齢者の問題
・環境問題

これらのテーマは、どれも内容を思い浮かべることができますが、重要なのはそれらのテーマを人権の観点からどのようにアプローチするかです。

たとえば、戦争をテーマにした場合、「戦争は悪い」という単純な主張では、人権に関連する内容とは言えません。人権に関する作文のテーマ選びは、自分自身がそのテーマを人権問題として書きやすいかどうかを考えて選びましょう。

 

人権作文のテーマで書きやすい例(題材)の一覧

人権作文の書きやすいテーマ1:いじめ

いじめは、人権作文の中でも最も身近で、実際の経験をもとにしやすいテーマです。

小学生の場合、いじめはいけないというだけでなく、自身が何をできるかを考え、それを取り入れることが良いでしょう。

一方、中学生や高校生の場合は、いじめの原因やなぜ周囲がいじめを防げないのかに焦点を当て、防止策を考察する内容にするのが書きやすいです。学生視点だけではなく、教育機関、学校、自治体などの取り組みにも触れることをお勧めします。

いじめは学校内で発生する問題ですが、その現場だけでは問題の解決が難しい場合もあります。欧米の学校で行われているいじめ撲滅の取り組みをインターネットで調査し、それを日本と比較検討することもいいでしょう。

➡ ポイントまとめ

・自身の経験を入れる
・いじめのキッカケ、周囲が止められない原因とは
・先生や学校、自治体がやるべき取り組みとは
・自分は何ができるか

 

人権作文の書きやすいテーマ2:戦争

戦争は、すべての人にとって重要な「安全な生活」の人権を奪う行為です。

このテーマは小学生にとってはやや難しいかもしれませんが、8月15日が日本の終戦記念日であることから戦争に関するドラマや特集番組が多くなるので、それを参考にすることで作文が書きやすくなるでしょう。

中学生や高校生の場合は、世界各地で紛争地域に住む人々や戦争によって難民となる人々に焦点を当てることをお勧めします。戦争時の非常事態が引き起こす混乱や、国家や地域の対立が個人の人権を奪っている実態に注目し、これを次世代が解決すべき重要な課題と考えてみましょう。

人権に関する作文を書く際、単に「戦争は悪い」とだけ述べるのではなく、戦争中にどのように人々の人権が侵害されるかに焦点を当ててみることが重要です。

➡ ポイントまとめ

・戦争そのものではなく戦時中の人権を考える
・過去の日本の戦時中の人権問題を考える
・戦争難民や亡命者への差別の実態とは




人権作文の書きやすいテーマ3:障がい者

障がい者は大まかに、精神的な障がいと肉体的な障がいに区別されます。

両者とも、健常者と比較して社会的に脆弱な立場に置かれており、多くの取り組みが行われているものの、未だに多くの課題が存在しています。

このテーマは、小学生から高校生にとって身近な差別問題であり、自身の障がい者に対する意識を振り返りながら文章にすることがよいでしょう。

学校や社会全体の取り組みだけでなく、個人の意識にまで焦点を当てるといいですね。

➡ ポイントまとめ

・障がい者への差別体験
・差別意識は自身にあるか
・現在の学校や社会の取り組みはどうなのか
・今後の課題や自分にできること

 

人権作文の書きやすいテーマ4:性差別

男女差別やLGBTに関連する性差別は、小学生には少し難しいかもしれませんが、身近なテーマでもあります。

中学生や高校生なら、将来の職業や進路について考える際、大学受験や就職における性差別に焦点を当てれば文章が書きやすくなるでしょう。

また、日本や世界の女性解放運動の歴史や今後の課題に触れることも一つのアプローチです。

多様な社会の背景を考慮に入れながら、LGBTの問題を取り上げるのはおすすめです。性的マイノリティに関連する書籍やコラム記事を参考に、現代社会における性的マイノリティの生活に関わる課題・問題点を考えてみると文章が書きやすくなるでしょう。

➡ ポイントまとめ

・身近にある性差別の体験や具体例
・受験や就職での性差別の現状と課題
・LGBTに対する偏見と社会が抱える問題
・差別のない社会のため自分ができること

 

人権作文の書きやすいテーマ5:人種差別

日本を含む沢山の国で、人権に関する問題として人種差別が浮かび上がっています。このテーマは中学生や高校生だけでなく、小学生にとっても理解しやすく、取り組みやすいものと言えます。

最近、在日外国人への差別が増加していることもあり、日常生活の中で差別に遭遇した経験がある場合、それをテーマとして取り上げてみることも価値があるでしょう。

人種差別に関する人権についての作文を書く際、ユダヤ人に対する差別も書きやすいテーマのひとつではないでしょうか。例えば、「アンネの日記」と「杉原千畝」を参考にすれば、第二次大戦とナチスによるユダヤ人への迫害について論じることができます。

自身ができる取り組みについて考え、将来の人権に関する文章の中にそれを取り上げて書き込んでいけば、書きやすくなるかと思います。

➡ ポイントまとめ

・在日外国人への近年の差別の状況は?
・人種差別の歴史について、黒人やユダヤ人などの事例を挙げて考えてみる
・人種差別の将来における課題と、自身ができる取り組みについて




人権作文の書きやすいテーマ6:病気の差別

差別に対する問題は深刻ではありますが、小中高生ともに取り組みやすいテーマです。

例えば、病気に関連する差別の例として、ハンセン病やエイズが挙げられますが、本やインターネットで詳細な情報を調べることで、具体的な事例を見つけることができます。

現代においても、がん患者に対する社会的差別は大きな課題となっています。病気に対する偏見だけでなく、その結果としての就職や結婚などの社会的な差別についても考察することが、テーマを論じる上での大事なポイントでしょう。

➡ ポイントまとめ

・ハンセン病やエイズ患者に対する差別の実態とは
・がん患者と社会との関係、および差別の現状は
・自分にできることは何があるか

 

人権作文の書きやすいテーマ7:災害関連

自然災害による被災者は、住居や職をなくし、社会的に非常に弱い立場の状況に陥ります。

具体的な事例として、東日本大震災での福島からの避難者に対する無理解な差別も存在しています。

日本は地震などの自然災害に晒される可能性が高い国であり、この問題は誰にでも起こりうる事と考えれば、人権に関する作文のテーマとして選択しやすいです。

被災者が直面する住居や雇用に関する課題から、避難所での差別に対処するために、政府や個人ができる具体的な取り組みについて考えてみることは有益でしょう。

➡ ポイントまとめ

・自然災害は誰にでも起こりうる可能性のある身近な課題
・災害被害者に対する現状の差別例は何か
・政府や個人が実践できる対策は何か

 

人権作文の書きやすいテーマ8:高齢者問題

高齢者に関連する問題はとても身近な問題で、現代の日本社会における深刻な問題のひとつです。

高齢化が進行するなかで、高齢者が直面する多くの困難について具体的に考えていきましょう。

日常の中で高齢者が抱える問題について思い起こし、身近な事例から社会全体の課題と対策を掘り下げて考察していけば、人権に関する作文のテーマとして選択しやすいのではないでしょうか。

➡ ポイントまとめ

・実際に高齢者との交流で感じた経験
・高齢者の貧困や高齢者介護(老老介護)の問題について考える
・身近な高齢者への差別と、自分ができる支援について考える

 

人権作文の書きやすいテーマ9:環境問題

環境問題を人権に焦点を当てた文章を書く場合、環境破壊が人権侵害や差別の要因であることを視点にすることが重要です。

ただし、人権に関する文章を書く際に、環境問題に過度に焦点を当てすぎると、論旨がずれることがあるため、公害による差別や環境汚染に苦しむ人々の人権に重点を置くことが大切です。

環境問題の多くが私たちの快適な生活に関係しているので、そのことを考え、自分たちが一人一人できることは何かを文章に取り入れることで、人権作文として書きやすいテーマにすることができます。

➡ ポイントまとめ

・環境問題そのものではなく、人権の観点から考察する
・日本および世界での環境汚染に住む人々の状況
・環境問題が引き起こす差別や人権侵害とは
・自分ができる取り組みは何か




人権作文の書き方2:構成・全体の流れ&書き出し

人権に関する作文を書く時の効果的な方法は、書き始める前に大まかな構成を考えることです。

作文の構成は、伝えたいメッセージを明確に伝えるために役立ちます。伝えたいメッセージに基づいて「導入、問題提起、展開、結論」などの構成を考えることが重要です。

それぞれの所に、どんな内容を、どのくらいの量で書くかをざっくり決めておくと、書き進めるのがスムーズにいきます。

 

たとえば、戦争をテーマにした人権作文の場合

導入…原稿用紙半枚~4分の3程度
テーマが読者に伝わるようにまとめる。

戦争中の人権侵害について。戦時下では言論の自由がない。
情報の入手→テレビの戦争特集を見て。

問題提起…原稿用紙1枚~1枚半程度
第二次世界大戦中の日本での言論の弾圧の実態

情報の入手→祖父が親から聞いたという戦時中の話(体験談)
本やネットで調べた内容も足す。

展開…原稿用紙1枚程度
自分が持つ戦争のイメージは、爆撃、戦闘。(先入観)

学んだこと→実際は民間人も色々な人権侵害を受けていた。
重要ポイント→②の問題提起を掘り下げる※祖父の話や調べた内容から感じたこと。

結論…原稿用紙半枚~4分の3枚程度
人権作文を書く前と後での 戦争への見方、感じ方の変化
戦争に関連する人権の問題と今後の課題、自分にできる事とは

 

上記の例の書き方のように、事前に概要や流れをスケッチしておくと、作文を書く際に書きたいアイデアを整理しやすくなります。

重要なのは、何を、どの程度の量で、どこに配置するかを論理的に検討することです。

無計画に執筆を始めると途中で行き詰まる可能性が高まりますので、計画的に書くことを心がけましょう。




人権作文の書き方3:体験談の書き方

人権作文は、コンテストの要綱に体験談を取り入れることが求められているため、体験談をどのように組み込むかが重要です。

作文を開始する前に、体験談をどの部分にどのように組み込むかを考えておいてください。

テーマによっては体験談を組み込むのが難しい場合もありますが、体験談を組み入れることは必須ではありません。過去の県大会や全国大会の優秀賞や佳作を見ると、体験談の扱い方は多様です。

ですが体験談を盛り込むことは、自分の視点から人権問題を考えるという独自の書き方となります。

人権作文の書き方4:事実と考えのバランスを意識

人権問題の作文は、事実と自分の考えとをバランス良く書かなければいけません。

事実に関しては、テーマに関する研究や自身の経験に基づいた事を含めることが大切です。

考えに関しては、テーマに対する感想や自身の主張を表現します。

事実に過度に偏ると、単なる情報提供にとどまり、論文や作文としての力を発揮しません。

逆に、考えだけに偏ると、その考え方の根拠が不明瞭となり、説得力を欠いてしまいます。

事実を提示した後は、それに対する個人的な感想や主張を明示しましょう。また、主張が存在する場合は、その根拠や理由も説明することが大切です。

これらの要素をバランスよく組み合わせることで、論理的でわかりやすく、説得力のある人権に関する文章を書くことができます。これによって、他の作文と差別化を図ることができます。

 

今後の課題とまとめ

人権に関する文章を書く際、重要なのは作成の前後での自己成長と学びを示すことです。

作文の「結」部分では、自身の感情を表現するだけでなく、今後の課題や社会の問題にも触れることが大切です。

書いた問題に基づき、将来の課題や問題解決の方法をまとめて提示することで、読者からの共感を得ることができます。

感情や主張も重要ですが、人権に関する文章において、自身が何を実現できるかに焦点を当てることも大切です。

自分自身や社会が今後どのように問題に取り組むべきかについての言及は、人権問題と自分の日常生活を結びつける方法です。

これにより、他人事ではなく、人権問題を個人的なものとして捉えていることを示し、最終的には今後の課題に触れることを忘れないよう心がけましょう。




「小学生向け」人権作文の書き方のコツ

小学生が人権に関する文章を書く場合、自身の興味を持ったテーマに焦点を当て、学んだことや感じたことが読み手に伝わるよう分かりやすく説明することが大切です。

読者が内容を最後まで理解しやすく読めるように構成することが、人権作文には重要です。

テーマから逸れないように気をつけながら、最後に自分の望む状況や思いを明確に表現すると、他の作文と差別化することができます。

 

「中学生向け」人権作文の書き方のコツ

中学生は、人権問題について意識が変わっていく過程を、作文のところどころで感じさせ、心の成長が分かるように書くことが大切です。

一般的な人権作文における意識の変化の過程は、以下の流れになることが多いです。

1. 興味を持つ
2. 問題を理解する
3. それらの問題について考える
4. 自身の役割や課題を認識する

人権作文を書く際は、事実と考えを意識するだけではなく、自身の思考の変化や成長にも目を向けていきましょう。

意識の変化に焦点を当てることで、段階的に人権問題に対する理解が深まっていく様子を読者に示すことができるので、それにより作文が他のものと差別化されます。




「高校生向け」人権作文の書き方のコツ

高校生が人権作文を書く際は、テーマに関して様々な角度から捉えることを心がけてみてください。

人権に関するテーマを考える場合は、以下の2つの視点から検討してみてください。

1. 日常生活の中で自身にも起こりうるような、または関係のある身近なテーマ
2. メディアなどを通じて知るが自身からは遠いテーマ

身近なテーマを選択する場合、そのテーマを社会的な問題としてとらえ、より広い視野から自身の考えや主張を表現してみましょう。

逆に、自身からは遠いテーマを選ぶ場合、それを日常生活に関連付けて、自分自身の問題として取り上げてみましょう。

これらの異なる視点から問題を考察し、様々な角度からみることで人権に関する文章がより深みを持ち説得力を持つものとなり、他の作文との差別化が図れます。

 

最後に

人権作文の書き方のポイントや、人権作文のテーマ一覧を書き方のコツとともにご紹介しました。

作文が得意でない方でも、ポイントを押さえることで優れた人権作文を書くことができますので、ぜひ参考にしてくださいね。

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